ワールドカップでは、ときどき結果だけを見ると信じられないような試合がある。
スペイン対カーボベルデ。
試合前の予想だけで言えば、多くの人がスペイン優勢と見ていたと思う。
ボールを保持する力。
中央を使う技術。
ワンタッチで相手を外す判断。
そして、タレントの質。
どこを切り取っても、スペインが試合を支配する展開は想像しやすかった。
実際、スペインはボールを持った。
何度も相手陣内へ進入した。
決定機も作った。
それでも結果は0-0。
この試合を「スペインが決めきれなかった試合」と見ることもできる。
ただ、自分はそれ以上に、カーボベルデが想像以上に完成されたチームだったと感じた。
守るだけではない。
奪った後も繋ぐ。
押し込まれても慌てない。
GPから丁寧に前進しようとする。
スペイン相手にそれをやり切ったことに、この試合の価値があったと思う。
スペインは何を狙っていたのか
前半のスペインは、いつも通りボールを握りながら試合を進めていた。
特に目立ったのは、ファビアン・ルイスとロドリの安定感だった。
ボールを持つ場面では落ち着きがあり、相手が寄せてきても慌てない。
そして、必要以上に持ちすぎない。
ワンタッチ、ツータッチでボールをはたきながら、相手の守備ブロックを少しずつ動かしていく。
このあたりは、やはりスペインらしい。
ただ、カーボベルデの守備形成がかなり良かった。
中央を簡単には使わせない。
縦パスを入れられそうな場所には、必ず人がいる。
スペインは中央を使いたい。
でもカーボベルデは中央を消す。
この構図が前半からはっきりしていた。
ククレジャのセカンドボール対応と大外のアクション
スペインで個人的に印象に残ったのは、ククレジャだった。
まずセカンドボールへの対応が良かった。
スペインはボールを保持するチームだが、相手に跳ね返された後のセカンドボールを回収できるかどうかで、攻撃の継続力が大きく変わる。
ククレジャはその部分で効いていた。
さらに攻撃面では、大外から裏へ抜けるアクションも見られた。
カーボベルデが中央を固めている分、外から背後を取る動きは有効になる。
特に、相手のサイドハーフとサイドバックの間、あるいは背後を狙う動きは、スペインが崩せる可能性を感じた場面だった。
中央で崩すだけではない。
大外を使って相手を横に広げ、その後に中を使う。
この形をもっと増やせれば、スペインはより決定機を作れたかもしれない。
右サイドではマルコス・ジョレンテのインナーラップが効いていた
右サイドでは、マルコス・ジョレンテのインナーラップが面白かった。
外を回るだけではなく、内側へ入っていく。
これによって、カーボベルデの守備は誰がつくのかを迷う。
サイドバックが外にいるのか。
中盤の選手が内側をケアするのか。
この一瞬の迷いが生まれると、スペインはテンポ良く前進できる。
ただ、カーボベルデはここでも大きく崩れなかった。
一人が釣り出されても、次の選手がカバーに入る。
中を閉じる意識が徹底されていた。
スペインは良い動き出しを見せていたが、最後の侵入まではなかなか許してもらえなかった。
ペドリのターンと運びは攻撃のアクセントだった
スペインの攻撃で、やはり違いを作れそうだったのはペドリだった。
中央で前を向く。
ターンで相手を外す。
そのまま運ぶ。
この一連のプレーは、スペインの攻撃にアクセントを与えていた。
特に、相手が1-4-5-1で中央を閉じている中で、ペドリのように狭い場所で前を向ける選手は非常に重要になる。
ただパスを回しているだけでは、相手のブロックは動かない。
誰かがターンする。
誰かが運ぶ。
誰かが一人外す。
その瞬間に、守備のズレが生まれる。
ペドリにはその役割があった。
後半になると、ペドリは中央だけではなく右や左にも顔を出すようになり、前半よりも自由に動いていた印象がある。
それによって、スペインの攻撃パターンは少しずつ増えていった。
カーボベルデは“ただ守るチーム”ではなかった
この試合で一番驚いたのは、カーボベルデの守備だけではない。
ボールを奪った後の振る舞いだった。
スペイン相手に押し込まれる時間が多くなると、普通は奪った瞬間に大きく蹴りたくなる。
とりあえず前へ逃がす。
時間を作る。
陣地を回復する。
それ自体は悪くない。
ただ、カーボベルデは違った。
奪った後、ただ蹴るのではなく、しっかりと繋ごうとしていた。
これはかなり大きい。
守備だけで耐えるチームは、時間が経つにつれて苦しくなる。
しかし奪った後にボールを保持できるチームは、守備の時間を自分たちで減らせる。
カーボベルデはそこに自信を持っていた。
だからこそ、スペイン相手でも完全に受け身にはならなかった。
GPヴァジーニャの配球がチームを落ち着かせていた
カーボベルデで最も印象的だった選手の一人が、GPヴァジーニャだった。
セーブの部分ももちろん素晴らしかった。
40歳とは思えない反応と落ち着きがあった。
ただ、自分がより注目したいのはポゼッション時の配球だ。
GPからのビルドアップで、CB2枚がペナルティエリア幅まで広がる。
その間に中盤のピナが下りてくる。
これによって、カーボベルデはコートを広く使いながら前進できていた。
スペインのプレスを受けても、すぐに慌てない。
GPを含めて数的優位を作り、逃げ道を確保する。
この設計があったからこそ、カーボベルデは「耐えるだけ」の試合にならなかった。
ヴァジーニャは最後の砦であると同時に、攻撃の始まりでもあった。
この点は非常に大きかったと思う。
後半、スペインは攻撃のスイッチを入れた
後半に入ると、スペインは前半よりも攻撃の圧を強めた。
ショートカウンター気味に相手陣内で奪い返し、そのままゴールへ向かう場面も増えた。
また、ペドリの立ち位置も少し変化していた。
中央に来る。
左右に流れる。
自由に動くことで、カーボベルデの守備基準をずらそうとしていた。
さらにファビアン・ルイスも一列前へ出ていくようなアクションを見せ、裏への動きも出てきた。
スペインはただ横に動かすだけではなく、少しずつ縦への意識を強めていた。
それでもカーボベルデは崩れなかった。
前半から走らされていた疲労は確実にあったと思う。
実際、後半は前半ほどポゼッションの質は保てていなかった。
それでも守備の最後の部分で耐える力があった。
ヤマル投入でスペインの攻撃は明らかに変わった
後半、ヤマルとミケル・メリーノが入ったことで、スペインの攻撃には明確な変化が出た。
特にヤマル。
彼がボールを持つだけで、カーボベルデの守備陣形は大きく動く。
一人が寄る。
二人目がカバーに入る。
場合によっては三人目まで意識を向ける。
これだけで、別の場所にスペースが生まれる。
ヤマルの怖さは、ドリブルだけではない。
パスの出し方が独特だ。
出てくるタイミングが分かりにくい。
DFからすると、縦に行くのか、中に入るのか、パスを出すのか判断しづらい。
だから対応が一瞬遅れる。
その一瞬で、スペインは前進できる。
正直、ヤマル投入後のスペインは明らかにスイッチが入った。
ただ、試合全体で見れば少し遅かったかもしれない。
左サイドの可変もスペインらしかった
後半のスペインで面白かったのは、左サイドの可変だった。
ダニ・オルモが外に出るなら、ククレジャは中へ入る。
外と中の役割を固定しない。
この動きによって、相手の守備基準をずらしていく。
スペインらしい崩し方だった。
ただ、ここでもカーボベルデは最後まで中央を簡単には空けなかった。
外に動かされても、中を閉じる。
中に入られても、ゴール前で人数をかける。
この徹底があった。
スペインはボールを持っていた。
スペインは形も作った。
でもカーボベルデは、最後の一線を越えさせなかった。
この試合の0-0は偶然ではない。
カーボベルデの後半は苦しかったが、崩れなかった
後半のカーボベルデは、前半に比べるとポゼッションの質が下がっていた。
これは仕方ない。
スペインに長くボールを回される。
横に動かされる。
何度もスライドする。
その疲労は必ず出てくる。
それでも、完全に壊れなかった。
個人的にはピナの右サイドへの配球が印象的だった。
苦しい時間帯でも、ただ逃げるのではなく、正確にサイドへ展開する。
これがあることで、カーボベルデは一息つける。
守備で耐えるためには、攻撃で呼吸する時間が必要だ。
ピナの配球は、その呼吸を作っていた。
総括|スペインが悪かったのではなく、カーボベルデが良かった
結果は0-0。
スペインからすれば、決定機を決めきれなかった試合だった。
決定力に泣いた試合と言ってもいい。
ただ、この試合をスペインの問題だけで片づけるのは少しもったいない。
それ以上に、カーボベルデがよく整備されていた。
守備時のシステムは1-4-5-1。
中央を閉じる。
サイドに追い込む。
奪った後は繋ぐ。
GPからの配球で前進する。
チームとして何をやるかが整理されていた。
スペインは後半、ヤマルの投入によって攻撃のスイッチを入れた。
ボール保持からゴールに迫るプレーは、やはり観客を魅了するものがあった。
それでも、カーボベルデは最後まで耐え切った。
特にGPヴァジーニャ。
40歳とは思えないセーブと落ち着き。
個人としても、チームとしても、今後の2試合が非常に楽しみになった。
スペインが勝ち点2を失った試合。
それと同時に、カーボベルデが世界に自分たちの完成度を示した試合だった。
ワールドカップらしい、非常に面白い0-0だった。

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